歯科訪問診療とは?
年齢が高くなると、心も体も少しずつ衰えていくものです。ご家族の方のお世話が必要になってくることもあるかと思います。体が不自由になるにつれ、お口のケアが十分にできなることがとても多いことをご存知ですか。入れ歯が合わなくてつらい、うまく噛めないなど、食べる楽しみがなくなってしまうのは、とても悲しいことです。
体や心の問題で歯科医院に通院できない方のために、歯科訪問診療という制度があります。歯科訪問診療は、歯科医師・歯科衛生士がお住いの自宅や施設・病院に訪問して、治療や口腔ケアを行うものです。それでは、歯科訪問診療について簡単にご説明したいと思います。
1.歯科訪問診療とは
在宅で受けられる医療(在宅医療)は、往診と訪問診療の2種類に分けることができます。その違いは、以下の通りです。
往診:医師・歯科医師が診療上必要と判断したときに、予定外に自宅などに赴いて、診療を行うもの
訪問診療:通院が困難な方に対して、診療の計画を立て、患者さんの同意を得て定期的に患者さんの自宅などに赴いて、診療を行うもの
歯科訪問診療は、訪問診療に該当し、あらかじめ歯科医院、歯科医師と患者本人またはご家族とが打ち合わせを行い、通院が困難な理由やお口の悩み、ご自宅の状況などをお聞きします。そのうえで、日程を調整して歯科医師や歯科衛生士が訪問し診療や治療を行います。
2.歯科訪問診療の対象者
歯科訪問診療の対象者は、通院困難な方です。介護認定を受けているかどうかは、基本的には関係ありません。(ただし、介護認定を受けていることが歯科訪問診療の対象者と限定している歯科医院もあります)
また、ご自宅で歯科訪問診療を受けられることはもちろん、以下に挙げる福祉施設や居宅等に該当される場所に入居されている方も、歯科訪問診療を受けることができます。
●福祉施設等
- ・病院、診療所
- ・介護老人保健施設
- ・(介護予防)短期入所療養介護
- ・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム:特養)
- ・地域密着型介護老人福祉施設(小規模な特別養護老人ホーム)
- ・(介護予防)短期入所生活介護
- ・自宅
- ・ケアハウス
- ・養護老人ホーム
- ・軽費老人ホーム
- ・有料老人ホーム
●居宅等
3.訪問後の治療の内容
初回の訪問は、不具合部分の応急処置を行い、治療よりも実際のお口の中の検査や確認をメインで行うことが多いです。定期的な訪問の中で治療や口腔ケアを進めていく初回にあたるので、初回訪問時でできる治療内容は限られます。
初回訪問時の状況を踏まえて、訪問診療計画が策定されます。2回目の訪問では、今後の治療・ケアについて説明がされます。患者様または、ご家族の承諾の同意を受けたうえで、2回目以降の治療とケアが進められるのです。
実際の治療の内容は、患者さんの個々のお口の状態に合わせたものとなります。虫歯の治療、入れ歯の調整、歯周病のための口腔内のケアなど様々な治療・ケアの方法があります。
また、介護認定を受けた患者さんに対しては、歯科医師や歯科医師の管理のもと衛生士がお口のケアに関する助言や指導をする「居宅療養管理指導」が行われます。
4.歯科訪問診療費
歯科訪問診療にかかる費用には、以下のものが含まれます。
- (1)治療(検査)費
- (2)歯科訪問診療料
- (3)指導料(居宅療養管理指導)
- (4)交通費
(1)治療(検査)費
検査、治療費は、実際に歯科医院に来院した時にかかる検査代や治療代と同様のものです。レントゲン撮影などの検査費用や、虫歯治療や歯周病ケア、入れ歯の調整などそれぞれの治療内容に応じて費用が決められます。
こちらの治療費は、医療保険の適応となります。患者さんの加入している保険(国民健康保険、社会保険、後期高齢者医療保険など)の負担割合に応じて、医療費が計算されます。
(2)歯科訪問診療料
患者さんのいる場所が施設、居宅にかかわらず、訪問診療を行う際に、かかる費用です。こちらは費用の算定方法がとても複雑なのですが、訪問1回で診療できる患者数と診療にかかった時間などによって、加算額が変動します。それに加え、緊急な対応が必要であったか、初診か再診かどうかによっても算定額が変わります。
(3)指導料(居宅療養管理指導)
介護認定を受けた患者さんに対して、歯科医師や歯科医師の管理のもと衛生士がお口のケアに関する助言や指導を行うことを居宅療養管理指導と言います。介護認定度合に関わらず、要介護・要支援どちらの状態であっても、同じ費用が掛かります。居宅療養管理指導という項目は、介護保険サービスの一環であり、介護保険が適用となります
※介護認定を受けていない方と《2.歯科訪問診療の対象者》に記載の「福祉施設等」に入居されている方は、医療保険で算定されます。
(4)交通費
交通費の徴収は、歯科訪問を依頼する歯科医院が決めることができます。全く加算しないところもあれば、距離に応じて加算する医院もあります。歯科訪問診療のご予約を取る際に、ご確認をお願いいたします。
歯科訪問診療において、医療保険と介護保険とどちらが適用となるのかとよくご質問を受けます。治療関係は「医療保険」、指導関係は「介護保険」の適用となります。しかし、介護認定を受けていない方と《2.歯科訪問診療の対象者》に記載の「福祉施設等」に入居されている方は、すべて医療保険での算定となりますのでご注意ください。
5.申し込み方法
歯科訪問診療の申し込み方法には、いくつかの方法があります。地域で包括的に個人を支援しようとする流れから、多くの場所に介護・医療の専門家がいます。かかりつけの歯科医院が歯科訪問診療を行っている場合などもありますので、身近な相談先にお問い合わせをすることで、情報を得ることができるかと思います。
●申し込み・相談先
- ・歯科医院への問い合わせ
- ・地域の歯科医師会への問い合わせ
- ・ケアマネージャーに相談
- ・市町村の窓口に相談
- ・医療・介護関係の窓口に相談(地域包括支援センター、社会福祉協議会、保健センターなど)
あまりになじみがない方も多いと思いますが、歯科訪問診療は確実に需要が高まっています。ご家族やご自身のいざという時のために、かかりつけの歯科医院が、訪問歯科をやっているのかどうか、訪ねてみてもよいかもしれません。
プラザ若葉歯科では、歯科訪問診療を行っております。専門の歯科訪問車で、ご自宅や施設に直接伺い、一人一人の治療や口腔ケア、個別指導を行うことができます。歯科訪問診療を行っていた患者さんが、元気になってきたので、通院に変わったというケースもありました。
大切なご家族のために、歯科訪問診療という選択を考えてみませんか。よく噛むことと楽しく食べることは、生活の質を高め気力もわいてきます。プラザ若葉歯科での、歯科訪問診療のご相談、いつでもお待ちしております。
参考ページ
患者さまの高齢化により多くの訪問診療のご要望をいただいたため、訪問歯科診療部門を立ち上げました。
歯科医院に通いたくても通えない患者さまも、歯の痛みやお口の中の不調は我慢せずにご相談ください。