厚さ約0.3mmの歯根膜の重要な役割
食べ物を食べたり、食いしばったりするときは、歯には大きな力がかかっています。
椅子に座る時、寝る時などソファーやベッドが私たちを優しく包んでくれているように、歯も同じように衝撃が吸収されて守られているのをご存じですか?今日は、歯を守るハンモック、約0.3mmの厚みの歯根膜についてお話しします。
歯のハンモック、歯根膜とは
歯は土台に直接くっついているわけではありません。歯の土台となる歯槽骨(しそうこつ)という骨の間に、クッション材の役割となっている歯根膜(歯根膜)という膜があるのです。その名の通り歯の根っこにある膜で、根っこ全体を覆っています。歯根膜にはどんな役割があるのでしょうか。
歯根膜の役割
① ゆらゆらしながら衝撃を和らげるハンモック
②歯と歯槽骨をつなげるキューピット
③味覚センサー
④やる気スイッチ
①ゆらゆらしながら衝撃を和らげるハンモック
「噛むとき」や「食いしばるとき」歯は大きな力を受けます。
歯根膜は、歯が受ける衝撃が歯槽骨(歯の根っこが収まっている骨)や脳にガンガン響かないように、歯の根っこと歯槽骨の間で、歯を包み込んで衝撃を和らげてくれているのです。ちょうどハンモックの本体と木の間にあるロープがしっかりと縛り付けられているのと同じです。何度も何度も噛み続けることで、歯がすり減ったり傷ついたりすることからも防いでくれます。
②歯と歯槽骨をつなげるキューピット
歯根膜は「歯」と「骨」というまったくちがう世界をつないでいます。膜と言ってもとても細い糸でできていて、糸の両端は歯と歯槽骨に入り込んで、2つをしっかりとつなげています。歯と歯槽骨をつなげている歯根膜の細かい糸をシャーピー線維といい、歯根が歯槽骨の歯槽というくぼみからスポスポ抜けないのはこの繊維のおかげなのです。①のハンモックの例に置き換えると、1本の歯を支えるためにたくさんのロープが骨に結び付けられているイメージです。
③食感センサー
暑くなると、ツルっとコシのある麺類を食べたくなってしまいますよね。麺類を食べるときに麺の「コシ」においしさを感じるという方は多いですよね。
食べ物のおいしさを味わうとき、「味」を区別するのには舌にある「味蕾(みらい)細胞」が味を感知しますが、食感を感じるのに重要な役割を果たしているのがこの歯根膜です。
歯ざわりとか歯ごたえという感覚は、歯の感覚と、咀嚼筋(かむための筋肉)の感覚から成り立っていると考えられています。麺類が歯に当たったことを歯根膜のセンサーが知覚し、そのときの咀嚼筋にかかる力を、筋肉のセンサーで知覚します。それらの情報が大脳のコンピューターで総合的に判断されて、麺類のコシがわかると考えられています。歯根膜には、力を感じるセンサーがあり、どれくらいの柔らかさのものを噛んでいるかというのを脳に伝えてくれています。噛むときの筋肉の力と歯根膜によって、歯ざわり・歯ごたえを感じることができるのです。
どんなものが歯に触れているかがわかるのは、歯根膜のセンサーのおかげなんですね!
④やる気スイッチ
歯根膜は三叉神経という太い神経につながっていて、歯根膜が「噛んだぞ」と伝えると、その情報は脳の「やる気」「考える力」「記憶」に関係する場所を刺激することがわかっています。「噛むこと」は「元気に生きること」につながっています。
その鍵となるセンサーが歯根膜のなかに隠れているんですね。
歯根膜がなくなると
色々なセンサーや役割で、歯を守ってくれて私たちに食感を感じさせてくれる歯根膜ですが、歯周病などによって歯を支える歯槽骨がなくなっていくと、それに応じて歯根膜も失われていきます。
歯根膜がない歯は鈍感になります。歯と歯をつないでいるため、構造的にも支えが少なく弱くなってしまいます。おいしいうどんの歯ごたえやコシが感じられなくなってしまうのです。とてもさみしいですよね。
厚さわずか0.3mm程度の組織がこんな重要な役割を果たしているとは驚きですね!お口の中の小さいけど、重要な役割を果たす歯根膜のお話でした。お口の中はさまざまな組織で作られています。そんなお口の中の環境を整えるのは、予防が大切です。
口から出た言葉が元に戻らないのと同じように、お口の中で失われてしまった歯や、歯を支える骨などはほとんど元に戻ることはありません。おいしいものをおいしいまま味わうために、いつも元気でいられるためにお口の中のケア、大切にしていきましょう。
みなさまのお口の健康応援団、プラザ若葉歯科では、いつでもご相談お待ちしております。