抜けた歯を取り戻す治療方法
噛めない、噛まないことが健康や寿命にさえも悪い影響を及ぼすことはすでに述べましたが、「歯が1本抜けたくらい大丈夫」と甘く見てはいませんか。歯は歯列というグループで仕事をしているので、たとえ1本でも抜けたまま放置してはいけません。
抜けた歯を取り戻す方法を紹介します。
「インプラント」とは
インプラントとは、歯が抜けたあとの骨の中に、骨と結合する性質があるチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を被せる治療法です。
入れ歯のように取り外す必要もなく、ブリッジのように両側の歯を削る必要もありません。噛む力も天然の歯と同じ感覚で噛めるくらいまで回復します。
インプラントの手術は、通常、インプラント体を体を埋め込む手術と、アバットメントを連結するための手術の2回に分けて行います。1回の手術で済ませる方法もありますが、顎の骨の硬さや骨量が十分でないとリスクが高く注意が必要です。
さまざまなメリットがあるインプラントですが、その反面、手術に伴う、費用が高額である、治療期間が長い、失敗も耳にするといったデメリットがあるのも事実です。
だからといって「インプラントは怖い」と敬遠するのは大きな誤解です。
治療が上手くいかないのは、事前の検査や診断が不十分だった可能性大。手術は土台となる骨がしっかり残っていることが前提で、歯周病や重篤な全身疾患がある人、ヘビースモーカー、歯磨きなどのホームケアが出来ない人にもおすすめできません。インプラントが不向な人もいるのです。
費用面では1本45万くらい、2本以上だと少し下がって1本40万円前後が目安です。健康保険は適用されませんが、確定申告の医療控除の対象になっています。
インプラントは、治療後も継続的なメンテナンスが必要です。リスクも含めて話し合える、信頼できる歯科医師を選ぶことから始めましょう。
「ブリッジ」と「入れ歯」
人口の歯としては、インプラントのほかに「ブリッジ」と「入れ歯」があります。
失った歯が1本から2本の場合はブリッジを使うのが一般的です。失った歯の両隣の歯を削り、その2本を橋げたにして連続した金属を被せます。古典的な方法ですが、橋げたにした歯がむし歯や歯周病にならなければ5~10年程度使えるというメリットがあります。一方で両隣の健康な歯を削ってしまうのが最大の欠点となっています。
入れ歯は、失った歯が多い場合や一番奥の歯を失ってブリッジが出来ない場合の選択肢となります。健康な歯を損なうこともなく、取り外して洗えるのがメリットです。
日本でよく使われているのはクラスプを使った部分入れ歯です。部分入れ歯は進化がめざましく、様々なタイプがあります。
これらの治療は、健康保険がきく場合と、自費治療になる場合があり、それぞれメリット・デメリットがあります。歯科医師とよく相談して決めましょう。
「自家歯牙移植」
虫歯などで歯を抜かなければならない時、自分の口の中に健康な親知らずがあれば、歯の自家移植ができる場合があります。
この方法では、ブリッジのように両隣の歯を削る必要がなく、入れ歯やインプラントと違って、自分の天然の歯の機能を活かせるのが最大のメリットです。自家移植した歯5~10年もつとされ、インプラントと比べれば多少短いかもしれませんが、なんといっても自分の歯なので生体に対して優しく、条件が合えばとても有効な方法といえます。
ただし、重度の歯周病などによって、抜いた歯の周囲の骨が失われている場合は、この方法が困難なケースもあります。
また、歯が抜けてから時間がたって骨が回復している場合や、親知らずの形が悪い場合など、条件によって予後が左右される場合もあります。
健康保険が適用される場合とされない場合があるので、いずれにしても歯科医師とよく相談してから治療を進めましょう。